悲惨な日本人学生の英語力|なぜ、大学生は英語を学ぶべきなのか?

悲惨な日本人学生の英語力

グローバル化が進んでいると言われて久しいですが、「先輩の就職活動を見ると、そこまで苦労しなくても就職ができているようだ。実際のところ、そこまで英語が必要ないのではないか?」と思う学生は多いのではないでしょうか。

残念ながら、その考えは非常に甘いです。実際に海外でビジネスをしてきた観点から、結論を言うと「大学生は英語を学ぶべき、それも実戦で使えるレベルにまで学ぶべき」です。


日本人学生の英語力の現状

TOEICの点数を(国際比較)してみましょう。
(出典:https://www.ets.org/s/toeic/pdf/ww_data_report_unlweb.pdf(追記:資料が2016年度のものに更新されたみたいです。2015年版はこちら))

日本の大学生(学部)のTOEIC平均点は、2015年時点で440点です。そして、全世界の大学生(学部)のTOEIC平均点数は631点となります。この時点で、他国のTOEIC受験生に200点近い、圧倒的な差を付けられています。

次に、日本と非英語圏諸国のTOEICの点数を比較してみます。(この数字は大学生とそうでない人の両方の数字が入っています。)

  • 日本: 513点
  • 台湾: 530点
  • 中国: 632点
  • マレーシア: 631点
  • 韓国: 670点
  • フィリピン: 691点
  • インド: 722点

日本を下回る国も、タイ、ベトナム、モンゴル、インドネシアなどいくつかありますが、日本の平均点順位は国別比較で下位20%に入るほど低いのです。

日本の大学生の多くが、英語が苦手な理由はいくつかありますが、一番大きな理由は「授業のほとんどが日本語で行われている」という点です。英語を理解しなくても、日本語で授業が行われ、専門書も日本語で出版されるので、英語を学ばなくても学問ができてしまいます。

例えば、これがマレーシアやフィリピン、インドとなると大きく異なります。そもそも母国語の専門書はなく、専門用語も母国語に訳されていないので、母国の文学といった母国語が必須な一部の授業を除いて、大学の学問=英語になっているのです。

日本の大学生は、母国語を使って楽に学問ができるという幸運とともに、英語力を得る機会を失っているとも言えます。

大学生が英語を学ぶべき3つの理由

大学生が英語を学ぶべき理由は、3つあります。

1.日本経済の縮小

Projected GDP Ranking (2016-2020)

世界全体の経済に占める、日本のシェアは1990年頃を頂点として、現在に至るまで低下を続けています。

2009年以前は、日本は世界で第二位の経済大国でしたが、2010年に中国に抜かれて以降もその差が開く一方です。近年のデータでは、中国のGDPは、日本のGDPの倍以上あるほどに差がついてしまっています。

その理由については、「生産性の低さ」「人口の減少」「高齢者の多さ」「起業意欲の低さ」など多くの理由が挙げられていますが、現実として言えることがあります。それは、「日本は先進国最低レベルの1人あたりGDPで、高齢者も多く、若年層が少ないので、経済は縮小せざるを得ない」ということです。

日本経済が強かった理由は、その勤勉さや労働意欲という点もありますが、消費意欲旺盛な多くの若年層人口がいたという点も非常に大きいです。しかし、すでに日本の人口減少は始まっており、人口が増加する見込みは全くありません。

例えば、同じ製品を作ったとしても、人口が1億2000万人いる国と、人口が9000万人しかいない国だと、単純計算でも市場が25%も少なくなってしまいます。

よって、多くの日本企業は、人口が減る一方で、市場拡大が期待できない日本に見切りをつけて、成長が期待できる海外市場の開拓に力を入れています。海外市場の開拓となると、まず必要になるのは英語、となるわけです。

2.国際的な人材競争

先日、台湾のビジネス商談会に出席しました。その際に、台湾人の通訳がついたのですが、彼は台湾の有名大学の学生で、中国語、台湾語、英語、日本語の4つの言語が話せる優秀な青年でした。

「今後、どういう所に就職しようのか」と聞いてみたところ、次のように教えてくれました。

「私はぜひ日本に行きたいと思っています。台湾から日本に行くと、サラリーマンとして働いた場合、給料はざっと倍になります。英語圏だと競争も激しいですが、日本だと複数言語を話せる人は少ないと聞いているので、これから準備したいと思っています。」とのことです。

グローバル化による熾烈な人材獲得競争について指す、「War for talent (優秀人材獲得のための戦争)」という言葉があります。企業として、優秀で見込みがある人を獲得するのは大変なので、人種、性別、国籍などを問わずに、どんどん優秀な人を発掘し、引き入れようとしています。

大学を卒業した時点で、4つの言語が話せる台湾人学生と、日本語しか話せない日本人学生。どちらのほうが海外展開を志向する企業が採用したいといったら、もちろん前者になります。

そして、日本政府も人口が減少するという現状を変えるために、優秀なホワイトカラービジネスマンの受け入れを促進していく予定です。現在の東京都知事の小池百合子氏も、公約として「国際金融特区の活用」として、「世界から企業や高度人材を呼び込む」と謳っています。

さきほどの優秀な台湾人大学生が、日本で職を得やすいような環境を作ることは、日本政府ならび東京都の主要な政策になっているのです。優秀な人材が多ければ、税金をたくさん払ってくれ、親子ともども日本に定住してくれるのであれば、日本に住む人口が増加することになります。

このため、優秀な人材採用は、中途採用や経営者レベルの話だけではありません。新卒や20代前半であっても、「War for talent」になっているのです。

3.求人倍率のウソ(人気企業は今も昔も入るのが大変)

2017年4月に、有効求人倍率が2倍を超えたことがニュースになりました。求人倍率が高いと、新卒として企業に入るのは楽になります。しかし、「企業を選ばなければ」という前提付きです。

若い新卒を多く雇って使い倒すことしか考えていない企業、残業代を払わない企業、そもそも給料が著しく安い企業、法令違反の業務を行わせようとする企業など、ブラック企業は多くあります。しかし、いくら「就職できればいいや」と思う学生も、そうしたブラック企業での就職は望んでいないはずです。

学生にとって人気のある企業群、例えば外資系金融、戦略コンサルティング、大手金融機関、総合商社、外資系IT企業などに入社するのは、今も昔も狭い門です。

例えば、世界で最も有名な戦略コンサルティング会社、マッキンゼーの日本での新卒採用人数は20人から30人程度と言われています。この狭き門を目指して、東大、京大、早稲田、慶応などの大学生が殺到しているです。

狭い門をくぐるには、学歴ももちろん必要ですが、語学力があるとかなりの強みになります。例えば、英語がかなりのレベルでできれば、海外系の部署にいきなり配属させても、言語という意味では苦労しないためです。採用する側としては、大きなメリットになるからです。

英語を学ばない場合の3つのリスク

次に、英語を学ばない場合のリスクについて考えてみましょう。

1.新卒入社で希望の会社への入社が困難になる

こちらは前章で説明した通りです。英語が苦手でTOEIC点数が低いと、そもそもエントリーシート自体受け付けてくれない会社もありますし、応募条件に明記はしていないが足切りTOEIC点数を設けている企業もあります。

2.英語ダメ人材として認識され、出世のチャンスが狭まる

次は、運よく希望企業に入った後の場合です。現在では、拡大する市場は国内よりも海外なので、海外展開意欲が強い企業ほど、英語力がある人にチャンスが回ってきやすくなります。

例えば、同じ同期入社だったとしても、3年目の人事異動の際、英語ができる人は海外勤務のチャンスを掴んだり、海外ビジネスに関わるプロジェクトに携わるようになります。

逆に日本語しか話せない人材は、日本市場専門人材として扱われるようになります。国内市場が飽和状態で、急速な拡大が期待できないため、縮小する市場をいかに維持するか、という後ろ向きな戦いに投入されることになります。

伸びる市場でビジネスをした方が、当然成果も出やすいので、昇進のペースは早まります。そして昇進すれば、さらにチャンスが回ってくる、という好循環に乗ることができます。逆に、日本市場専門となると、伸びない市場を維持しつつ、国内の転勤を繰り返して人生が終わる、ということになりかねません。

3.買収・倒産・転職といったタイミングでの選択肢が狭まる

企業は永遠ではありません。この記事を執筆している2017年6月時点で、名門電機メーカーの東芝は、粉飾決算を長らく行ってきたことが露呈した結果、自社の主力事業の大半を売却して、原子力発電だけ行う企業となってしまう予定です。

どれだけ大きな会社に入社しても、会社が永遠になくならない保証はありません。

会社は事業が悪化すると、買収されるか、倒産するかのどちらかとなります。勤めている会社が買収された場合、買収先が日本企業とは限りません。海外企業に買収された場合、会社内の言語は英語になりますので、「日本企業に勤めていれば英語ができなくても安全」という考えは通用しません。

もちろん、英語ができないから即リストラになるわけではありません。

しかし、外国人の上司の下に、2人部下がいて、どちらかをリストラしなければならないケースを考えてみましょう。英語が話せて意思疎通が問題なくできる部下と、日本語しか話せずに意思疎通があまりできない部下の2人がいる場合、前者を残して後者をリストラしたくなるのは当然です。

そして、買収され外資系企業となった場合、英語が話せなければ出世の道は閉ざされます。部長レベルにはなれるかもしれませんが、役員レベルはまず無理でしょう。

次に、「新卒で入社した会社に見切りをつけて転職したい」という場合です。転職先を探すとき、日本企業であれば、英語ができなくても受け入れてくれる企業は多いですが、特に高いスキルを要求される企業だったり、外資系企業になると、英語ができない人を採用していないこともあります。

せっかく転職に踏み出したのに、希望の企業は英語必須となっていた場合、自分がつかみ取ることができるチャンスが一気に減ってしまいます。

著しく英語が苦手な日本の大学生

さて、ここまで日本の大学生の英語力について、英語を学ぶメリット、そして学ばない場合のリスクについてお伝えしました。他のアジア圏の大学生と比べて、日本の学生は著しく英語が苦手であることがお分かりいただけたかと思います。

では、就職後に英語力を生かしてチャンスをつかんだ実例や、各業種ごとの英語の活用方法についてはどうなっているのでしょうか。

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