ブラックバイトとは何だろうか。
また、なぜブラックバイトが注目され、社会問題となっているのだろうか。
今回は、ブラックバイトの定義と背景について分かりやすく解説していく。
この記事の目次
ブラックバイトとは?
狭義の定義
『学生であることを尊重しないアルバイトのこと。フリーターの増加や非正規雇用労働の基幹化が進む中で登場した。低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたすほどの重労働を強いられることが多い。』ブラックバイトユニオン
広義の定義
『学生の無知や立場の弱さにつけ込むような形での違法行為が当たり前となっているアルバイトのこと。違法行為として、例えば、残業代不払い、休憩時間の不付与、不合理な罰金の請求、パワハラ・セクハラの放置などがあげられる。』ブラックバイトユニオン
難しいのが、どこまでがブラックバイトでなくてどこからがブラックバイトであるかだ。判断の基準となるのは、違法性があるかと、どれだけの実害が出ているかだと思われる。
ブラックバイトの背景
シンプルにまとめるなら、「非正規雇用に頼る企業が増え、アルバイトに過酷な労働を強いるようになったから」だが、せっかくなので色々な視点から考えてみる。
非正規雇用による人件費削減
バブル崩壊により安全神話が崩壊。その後の不況により企業は人件費を削減するため非正規雇用者を積極的に雇い始め、日本社会に非正規雇用者が増え始めた。そこに経済活性化を目的とした労働者派遣法改正といった労働市場の緩和策が企業の非正規雇用を後押ししている。
フリーターの増加
社会不安の増大などにより非正規雇用者として生計を立てるフリーターが増加し、学生アルバイトにもフリーターをロールモデルとした同程度の仕事が求められる機会が増えた。
不景気と授業料の増加
日本人の平均収入は不景気により1997年の467万円をピークに2014年は415万円と50万円以上減少している反面、大学の授業料は右肩上がりに増加している。今や半数以上の大学生が奨学金を頼りに大学に通っており、仕送り額が減少している中、アルバイト収入を支えに生活している。
大学全入時代の到来
戦後、日本の大学数は増え続け、今では60%近くが大学(4年生・短大も含む)に進学する状況となっている。「できれば大学に入った方が良い」というのが常識となり、偏差値が低い・家計が苦しいにも関わらず大学に進学する学生が増えた。
グローバル化・テクノロジーの進歩
グローバル化・テクノロジーの進歩によって経営・業務のシステム化が進んだことで非正規雇用者でもマニュアルに従うことで正社員並みのパフォーマンスが出るようになっている。本来であれば正社員がする仕事をアルバイトが任せられるようになり、非正規雇用の基幹化が進行している。
インターネットの普及
ネット採用が広まってきて、安価で使い捨てできる派遣・アルバイト・パートといった非正規労働者を効率的に雇用できるようになった。特に学生は低賃金で融通も利きやすく法的知識も疎いので使い勝手が良い。
ただ、労働者はネットを通じてアルバイトに関する情報を得られるようになり、労働に関する知識が徐々に蓄えられてきている。
ソーシャルメディアの普及
当然のことながら、ブラックバイト自体はずっと昔から存在していた。ではなぜ広まったのかというと、これまで挙げた非正規雇用増大の背景や技術発展を背景として、インターネットの普及とソーシャルメディアによるユーザー同士の双方向的な情報発信・拡散がされるようになったことが大きな要因だと考えられる。
ひと昔前なら、他人のアルバイト状況や社会的な問題に触れる機会は少なかったが、不特定多数の人間からアルバイトに関する情報を気軽に触れるようになって現状の異常さに気づけるようになり、そうした情報がネットメディアを中心に拡散された。
補足:非正規雇用の社会問題化
近年はアベノミクスによって景気が若干回復したため、慢性的な労働者不足(もちろん少子化なども影響)となってきている。主に外食産業や小売業などでは、人件費の高い正社員ではなく安価で使い勝手の良いアルバイトの雇用により利益を上げているため、アルバイトの奪い合いも発生している。
非正規雇用に頼る企業は増加の一途をたどっており、現在は労働者の40%が非正規雇用となっている。現代社会において非正規雇用の重要性が高まるにつれて様々な問題点を見え始め、社会問題化している。
まとめ
ブラックバイトの問題が知れ渡り、労働者がこうしたアルバイト先を判断・対処できるようになってくれば、少しずつ解決されていくのではないかと思う。
ただ、非正規雇用が増加している中で学生に対して求められていく基準がさらに上がってくると、一部の職場では学生に対してさらなる重労働を課してくるかもしれない。
対処法を知らなければ、過酷な労働を強いられていたとしても「仕方がない、働くとはこういうもんだ」と間違った認識を持ってしまうかもしれないので、事前にブラックバイトに対して正しく理解しておくことが大切だ。