大学生が就職して英語を活かせる業界・職種とは?

学生が英語力を活かせる仕事・活かせない

外国語学部で英語を専攻している大学生、もともと英語が好きだったり、得意だったりする大学生、または「大学時代はTOEIC頑張ったので社会に出たら、ぜひ英語を使いたい」と思っている大学生の方は多いと思います。

そうした方々は、漠然と英語を使って仕事をしたいと思って就職活動しますが、実際のところ、就職後に英語を使って仕事をする職場は実は少ないのです。厳密に言うと、「大企業であれば、どこかで英語を使って仕事をしている人はいるが、自分がその部署に配属される可能性は低い」ということが多いのです。

以下では、「英語を使って仕事をするつもりで入社したのに、全然英語を使う機会がない!」という行き違いを防ぐために、「実際大手企業で、英語を使う仕事はどれくらいあるのか」という観点をお伝えしたいと思います。


業界別・英語を使う可能性をチェック(日系企業)

1.商社: 英語使う使わないは、部署により大きく異なる

商社

企業例: 三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日など

まず、商社は「英語を生かして、海外でバリバリビジネスをする」というイメージを持っている方も多いと思います。しかしながら、商社というのは入社してみるまで、何をやるか全くわからないブラックボックスのような企業です。どの部署に配属されるかを、選ぶことはできません。

例えば、商社のナンバーワンである、三菱商事を見てみましょう。事業グループとして、以下のようなグループに分かれています。

  • 地球環境・インフラ事業グループ
  • 新産業金融事業グループ
  • エネルギー事業グループ
  • 金属グループ
  • 機械グループ
  • 化学品グループ
  • 生活産業グループ

これらのグループは、それだけで何兆円もの売り上げがある「社内カンパニー」のようなもので、各グループの下にはさらに細分化された組織があります。初年度から、いきなり海外生活がメインになるエネルギー開発系の仕事もある反面、国内の小売業関連で日本人としか仕事をしないような組織もあります。

「英語を使いたい」と思って商社に入ったのに、国内の小売業関係のビジネスに従事し、英語を使う場面がほとんどない商社マンもいます。このように商社というのはとにかく当たり外れが多いことを承知して、入社する必要があります。

2.金融業: 英語を使うのはごくわずか

金融業

企業例: 三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、野村証券、日本生命保険など

日系の銀行、保険、証券などの金融機関のほとんどは、日本国内からの収益がほとんど、または100%を占めています。海外で大きなビジネスをしている日系金融機関は非常に少ないので、英語を使って仕事をする機会は非常に少ないです。

金融機関は卒業大学により、露骨に待遇を変えます。東大、京大、早稲田、慶応といった大学を卒業している人は、社内的に比較的良い部署を転々としますが、これらの大学よりも下の卒業大学の人は、なかなかチャンスが回ってきにくいのが実情です。もちろん、海外駐在のチャンスも、有名大学卒の人が圧倒的にチャンスが回ってきやすいのが実情です。

3.大手メーカー: かなりチャンスが多い

大手メーカー

企業例: トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、ソニー、ファーストリテイリングなど

大手メーカーは採用時に英語力を求めてはいるものの、商社や金融に比べて、英語力がある学生は少ないです。よって、入社後に「こいつは英語ができる人材だ」ということを、周囲に認識させ、自分の仕事をしっかりやったうえで「英語を活用する仕事をしたい」と言い続ければ、大手メーカーで海外駐在のチャンスを得ることは難しいことではありません。

特に海外販売比率が高い企業であれば、なおさらです。

ただ、駐在場所が英語圏なのか、他の言語圏なのかは分かりません。というのも、「大きな需要がある国」が、英語圏とは限らないためです。例えば、日産自動車を例にとると、主要4市場の販売実績は以下の通りです(2016年度)。

  • 日本: 55.7万台
  • 中国: 135.5万台
  • アメリカ: 158.1万台
  • ヨーロッパ: 77.6万台

この中で最も増加率が高いのが中国です。このような企業だと、外国語の活用が英語ではなく、中国語が特に求められる場合が高くなります。

4.小売・流通業: ほとんど使わない

小売・流通業

企業例: イオングループ、セブンアイドアイ、三越伊勢丹グループ、ファミリーマート、ローソンなど

スーパー、コンビニ、百貨店といった企業は、海外での存在感はさほど大きくありません。定型的な内需依存型企業となりますので、海外赴任のチャンスはほとんどないですし、英語を使う仕事もごくわずかとなります。

もちろん、アジア諸国で日系のショッピングモールを見たことがある方は多いかと思いますが、全体のショッピングモール数からすると少ないです。よって、英語を使いたい方にはあまりお勧めできません。

5.ネット企業: 人材がどのように活用されているかチェックする必要

ネット企業

企業例: 楽天、DeNA、グリー、ミクシィ、スタートトゥデイなど

楽天のような、日本初で海外でも事業展開しているネット企業が増加しています。海外展開をしているので、自分も英語を使って活躍できるのかと考える方も多いと思いますが、これは社内事情をよく注意する必要があります。

楽天を例にとると、CEOの三木谷浩史さんがハーバード大学のMBA保持者ということもあり、海外大学のMBA保持者の採用を優先的に行っています。このため、海外での事業展開など、チャレンジしがいのある、そして英語を活用する仕事がMBA保持者によって担当されている、という指摘もあります。

ネット企業は歴史が浅いこともあり、新卒入社した社員を優遇するのでなく、力のある中途社員が活躍しています。逆に言うと、新卒社員はよほど力を付けないと面白い仕事につけない、とも言えます。

もちろん、上記は一般的に言われている楽天の例ですが、会社によって文化は全く異なり、あまり傾向もないのが実際のところです(ちなみに、ネット企業は海外展開していない企業が大多数です)。

よって、入社前に社員の声を聞くなど、よく調査することをおすすめします。

6.通信業: ほとんど使わない

通信業

企業例: NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、NTT東日本、NTT西日本など

携帯電話会社や、ネットワーク回線などを販売している企業は、国から免許をもらってそれで商売をしています。そして、携帯電話会社がよい例ですが、大手企業はごくわずかしかありません(多くの企業が自由に多数競争しているわけではありません)。このため、大きなビジネスがある日本を離れて、大規模な投資を海外で行うケースは多くありません。

また、投資を行ったとしても、通常は企業買収もしくは純粋投資であり、日本人をたくさん海外に連れていくことはしません(2013年のソフトバンクによる米国スプリント買収が良い例です)。

このため、大手の通信企業に入社すると、よほどの幸運でもないと海外赴任もないですし、仕事で英語を使うこともありません。

7.IT企業: ほとんど使わない

IT企業

企業例: 富士通、日立製作所、NEC、野村総合研究所、電通国際情報サービスなど

日系の大手IT企業は、日本国外ではほとんど存在感がありません。海外進出しているIT企業も多いですが、多くは日本のお客さんが海外進出するのに合わせて、一緒についていったというケースが多いのです。

売上比率の大多数が内需であるため、英語を使う可能性はほとんどありません。会社の中でも、出世ルートは「IT投資が大きいお客さんを担当しているかどうか」という認識で、英語を使うことと出世があまり関係ない、実は極めて日本的な会社文化です。

業界別・英語を使う可能性をチェック(外資系企業)

次に、外資系企業の英語利用度についてチェックしてみましょう。外資系企業は、「どのような業種か」という点も重要ですが、それ以上に「どのような職種か」であるほうが、英語を使う、使わないにおいて重要になります。

職種によっては、ほとんど日本語になったり、逆にほとんど英語になったりするためです。

1.営業: ほとんど使わない

私は新卒で大手の外資系IT企業に入社し、日本企業向けに5年間営業したのですが、英語が必要になった場面は「本社から偉い人がやってきて、お客さんに連れていく」時だけでした。たった1度だけです。

外資系企業の日本の営業は、当然お客さんも日本人なので、英語を使うことはほとんどありません。社内も日本人、お客さんも日本人という環境です。よって、英語が全くダメでも、バリバリと働いている人がいます。

2.技術系: 使う人もいる

技術系の部署になると、本社の英語のドキュメントを読み解いたり、不明点を英語で質問したりと、英語を利用する場面が増えてきます。

とはいえ、「話す」「聞く」よりも、どちらかと言うと、(英語のドキュメントを)「読む」「書く」といったことが多いので、正確な読解力と、英語で正しいメールを書く力があれば務まるケースも多いです。

3.マーケティング: かなり使う

外資系企業だと一般的に、マーケティング部門は英語が必要とされます。これは、「全世界的なマーケティングキャンペーンに合わせて、日本でもマーケティングをしなさい」と言われるためです。

本社が指示する方向性ならび手段などを正しく理解する必要があります。よって、英語での電話会議が多く、「読む」「書く」だけでなく「話す」「聞く」が求められることも多いです。

4.バックオフィス: かなり使う

バックオフィスとは、お客さんとの接点がない管理部門を指します。例えば「経理・財務部門」「人事部門」「総務部門」「システム部門」などです。

こうした部門は、「お金を稼ぐ」部門ではなく、「お金を使う」部門なので、お金の使い方やその方針などについて、海外本社から強くコントロールを受けます。

このため、マーケティング部門と同様、「読む」「書く」「話す」「聞く」が必要になることが多いです。

これらの部門の中でも、特に「経理・財務部門」が最も本社のコントロールを強く受ける部署になります。現地法人からどの程度の売り上げ、利益が上がるか、収益予測は、といった点は、上場企業であれば、海外本社での投資家向け情報発信に強く影響するためです。

まとめ

日系企業でも、外資系企業でも、英語を使う企業・部署もあれば、そうでない企業・部署もあります。

よって、英語を活用したいと思うのであれば、自分がどのような企業に就職するかだけでなく、どのような職種につくか、つきたいかについても、考えておくとよいでしょう。

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