みなさん、大学で行われる卒業講演を知っていますか?
アメリカの有名大学では、世界を動かしている有名な人物が卒業生に向けて講演をすることがあります。日本では、近畿大学で堀江貴文が講演をしたのが話題となりましたが、海外ではスティーブ・ジョブズ氏やJ・K・ローリング氏など、歴史的な実績を残している人が登壇し、大学の卒業生に向けてこれから社会に出てどう生きていくかという気構えを伝えてくれます。
世界の先端を走る方々の講演の中には、これからの社会を生き抜くヒントが沢山隠されています。
今回は、世界的に有名な大学卒業講演をまとめました。現役の大学生はもちろん、そうでない方もぜひ視聴してみてください。どれも大学の教授のくだらない話よりも何倍も価値ある話です。
この記事の目次
ステイーブ・ジョブズ(apple創業者)|スタンフォード大学卒業講演(2005年)
故スティーブ・ジョブズ氏が2005年にスタンフォード大学で行った卒業講演です。スピーチの名手と言われたジョブズ氏のこの講演は、スタンフォードの卒業生だけでなく、世界中の人々を魅力しました。
『stay hungry,stay foolish』という言葉を皆さんも聞いたことありませんか? 解釈は様々ですが、このスピーチにで使われた言葉で「現状に満足せずにより良い未来を渇望し、常識の枠を超えて自分の信じた道を進もう」という、強いメッセージ性を感じます。
私は17の時、こんなような言葉をどこかで読みました。確かこうです。「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」。それは私にとって強烈な印象を与える言葉でした。そしてそれから現在に至るまで33年間、私は毎朝鏡を見て自分にこう問い掛けるのを日課としてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」。それに対する答えが“NO”の日が幾日も続くと、そろそろ何かを変える必要があるなと、そう悟るわけです。
自分が死と隣り合わせにあることを忘れずに思うこと。これは私がこれまで人生を左右する重大な選択を迫られた時には常に、決断を下す最も大きな手掛かりとなってくれました。何故なら、ありとあらゆる物事はほとんど全て…外部からの期待の全て、己のプライドの全て、屈辱や挫折に対する恐怖の全て…こういったものは我々が死んだ瞬間に全て、きれいサッパリ消え去っていく以外ないものだからです。そして後に残されるのは本当に大事なことだけ。自分もいつかは死ぬ。そのことを思い起こせば自分が何か失ってしまうんじゃないかという思考の落とし穴は回避できるし、これは私の知る限り最善の防御策です。
君たちはもう素っ裸なんです。自分の心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。
PART 5. ABOUT DEATH|Stay hungry, stay foolish. [和訳] スティーブ・ジョブズ スタンフォード大学卒業式でのスピーチ
ザッカーバーグ(Facebook創業者)|ハーバード大学卒業講演(2017年)
マーク・ザッカーバーグ氏が2017年にハーバード大学で行った卒業講演です(彼もジョブズ氏と同じように大学を中退しています)。ザッカーバーグ氏はまだ33歳ということで、卒業生とさほど歳が変わらないにも関わらず、Facebookを創業して世界でも5本の指に入るほどの時価総額の企業にまで成長させています。
テクノロジー業界の最前線で働いているザッカーバーグ氏のこの講演は、今の世代の若者全員が聞く価値のあるものです。
アイデアはいきなり完成形でやってきたりしない。それについて取り組んでいるうちにだんだんクリアになってくるんです。とにかくまずは始めなくては。人と人を繋ぐ方法が全部わかるまで始められないのだとしたら、僕はフェイスブックを始められなかったでしょう。
映画やポップカルチャーは、ここのところがわかってません。「そうかわかったぞ!(エウレカ!)」と叫ぶ奇跡の一瞬があるというのはキケンな嘘です。自分にはそんな瞬間なかったぞ・・・と居心地の悪い思いをさせてきます。その嘘によって、「将来大きくなるはずのアイデアのタネ」を持っている人がとにかくそれを始めることを辞めてしまうかもしれない。あ、そうそう、イノベーションについて映画が間違ってることがもう1つあった・・・「誰も数学の方程式を窓ガラスに書いたりしません」。
ドリュー・ヒューストン(Drop box創業者)|MIT(2013年)
ドリュー・ヒューストン氏が2013年にマサチューセッツ工科大学で行った卒業講演です。人生を生き抜く上で大事なコツについて語っており、「テニスボール」「サークル」そして「30,000」がこの講演の鍵になります。
卒業後に陥りやすい最後の危険な罠は「準備すること」。誤解しないで下さい。学び続けることは最も重要なことのうちのひとつですが、卒業したら「変化」が必要です。これからは、実際に行動してみて初めて学ぶことができるのだ、ということを覚えておいてください。夢の為に計画し、勉強して一生を過ごすことも出来ますが、皆さんがしなければならないのはとにかく始めることです。
私だって、準備が完璧にできていたわけではありません。サンフランシスコに引っ越して間もない頃、投資家達が「オッケー! 投資しようじゃないか! どこにお金を送金すればいいかな?」と言った日を覚えています。24歳だった私にとって、それはもうクリスマスみたいなものでしたね。プレゼントを開けるみたいに月曜の朝一番、パソコンを開き、オンラインバンキングにアクセス、更新ボタンをひたすらクリックする。自分の会社の口座残高が60ドルから1.2百万ドルになったとき、「うぉぉ! すごいぞ! 残高数字にコンマが二つも(120,000,000)!」(笑)。
3.人生は「30,000日」しかない|「人生のコツはたったの3つ」Dropbox創業者ドリュー・ヒューストンの卒業スピーチが感動的
ラリー・ペイジ(Google共同創業者)|ミシガン大学(2009年)
ラリー・ペイジ氏が2009年にミシガン大学で行った卒業講演です。夢を実現させる方法について、「非現実的だったとしてもやってみること」というアプローチで、夢を思い描くこと・行動することの重要性について語っています。
夢を追いかけることについて、お話したいと思います。正確には、夢を現実にする方法と言ったほうが良いかもしれません。夜中にすごくリアルな夢を見て飛び起きたことはありませんか? 飛び起きたときにそれを書き留めておかなければ、翌朝その夢を思い出すことはできません。23歳のときにこれを経験しました。鮮明なビジョンが夢に出てきたのです。バッと飛び起きて考えました。「もしもウェブのすべてをダウンロードできたとしたら? リンクを保存して……」。すぐさまペンを掴んで頭に浮かんだアイディアをすべて書き殴りました。
(眠り続けて)夢を見るのをやめたほうがいいときもあるのです。その夜はずっとアイディアを書き出して、夢を現実にする方法を考えました。そして私はそのアイディアを大学の教授に話します。「……ということで、すべてのウェブをダウンロードするのにたぶん数週間かかると思うんです」。そのとき彼は、私の計画には数週間どころか莫大な時間がかかることを知っていたはずですが、何も言わずに私に好きなようにやらせてくれました。
若者の「絶対にできる!」と信じる力は、時にものすごいことに繋がります。当時はサーチエンジンを作ろうなどと、これっぽっちも考えていませんでした。それでもその後、ウェブページをランク付けする良い方法を考案し、素晴らしいサーチエンジンが生まれました。それがGoogleです。素晴らしいことを思い付いたら、とにかくやってみることです。
ティム・クック(apple CEO)|ジョージ・ワシントン大学(2015年)
ティム・クック氏が2015年にジョージ・ワシントン大学で行った卒業講演です。彼は、現実主義的な生き方をしてきたものの、スティーブ・ジョブズと出会ってからは十代の頃の気持ちを思い出して理想を追い求めて仕事に熱中したそうです。
無難な選択肢に落ち着かずに、理想を追い求めて熱中することの大切さを教えてくれます。
我々のコミットメントは製品そのものだけでなく、それらの製造プロセスや、公平性を要求し促進する役割、教育の促進にも及びます。価値観に基づいた行動を実現する会社は、真に世界を変えることができると我々は考えています。
それは個人にも可能なのです。そしてそれをするのは、あなたです。あなた自身でなくてはならない。卒業生の皆さん、あなた方の価値観が本当に大事なんです。それこそが揺らぐことのない己の北極星なのです。自分が正しい方向に向いた時、職業は新たな意味合いを持ちます。そうでないならただの仕事です。
それだけに人生を費やせない、人生は短いのです。政府、ビジネス、科学、芸術、ジャーナリズムに学会、こういったものを先導するには、最も輝くあなた方の世代の人間が必要なのです。
これら全ての道において、追求は尊敬に値します。モラル意識に満ちた仕事をする機会はあるのです。「良いこと」や「無難なこと」を選択などする必要はありません。それはそもそも間違った選択肢です。
ティム・クック(apple CEO)|MIT(2017年)
ティム・クック氏が2017年にマサチューセッツ工科大学で行った卒業講演です。私たちとこれからの情報社会・テクノロジーとの付き合い方についても言及されています。
現在、テクノロジーは生活のあらゆる面で不可欠なものです。そして、世のためになる力となっていることがほとんどであるものの、一方で、その裏に潜む弊害が急速な速度で広まり、これまでになく深く浸透しつつあります。
セキュリティやプライバシーが脅かされ、でたらめなニュースが広まり、ソーシャルメディアが非社交的なものになってきている。私たちをつなげる役目を果たすはずのテクノロジーそのものが、ときに私たちを分断しているのです。
テクノロジーには偉大なことを成し遂げる力がありますが、それを自らではしようとしません。なにも欲することがありません。そうした要素をもつテクノロジーだからこそ、人間が必要なのです。
私たちの価値観、私たちの家族や隣人、地域社会への深い関わり、美への愛情や私たちの信仰はすべて相互につながっているという信念、良識、そして思いやりを必要としているのです。
私は、AIによってコンピューターが人間のようにものを考えるようになることについては心配していません。むしろ懸念しているのは、人間がコンピューターのようになって、価値基準や共感、物事の因果関係への懸念をもつことなく考えるようになってしまうことです。
その未然の予防こそ、みなさんに力を貸していただきたいことです。なぜなら、科学が暗闇での探求であるなら、人間性は灯として、過去、未来に待ち受けている危険を照らすことができるからです。
スティーブはかつて言いました、「テクノロジーだけでは不十分だ。我々の胸を高鳴らせるのは、テクノロジーが教養と連れ添い、人間性と一緒になってこそだ」と。
エリック・シュミット(Google会長)|ボストン大学(2012年)
エリック・シュミット氏が2012年にボストン大学で行った卒業講演です。テクノロジーの可能性と、それをツールとして政治や社会を変え、世界で起こっている問題の解決に繋げることができること、挑戦に対して前向きであるべきであることを教えてくれます。
皆さんにアドバイスさせていただきたいのは、「YES」という姿勢をもつことです。新しい国へ行くことに、新しい人々に会うことに、新たな言語を習うこと、スポーツを習うことに「YES」と言ってください。
「YES」こそが、新しいキャリアにチャレンジする方法で、人生のパートナー、そして家族を築く方法です。
たとえ困難な道でも「YES」をいうことは、新しいことにチャレンジしていたり、新しい誰かに会ったり、あなたの人生、または他人の人生を変えることなのです。「YES」はあなたを前向きで、ポジティブに保ち、周りの人が助けや、アドバイスを求めてやってきます。「YES」が私たちを若く保ってくれます。「YES」は大きなことをできる、小さな言葉です。頻繁に言ってください。もうひとつ、アドバイスさせていただきたいのは、失敗を恐れないこと、また同じく成功を恐れないこと。私の好きなイタリア語のフレーズに、尊敬するサーカスパフォーマーを表す「salto mortale」という言葉があります。これは、「セーフネットなしで宙返り(=決定的な飛躍)をする」という意味です。
J・K・ローリング(ハリーポッター著者)|ハーバード大学(2008年)
J・K・ローリング氏が2008年にハーバード大学で行った卒業講演です。「失敗のもたらす恩恵」と「想像力の重要性」をテーマに彼女の貧乏時代の話や学生が社会に出る上でどのような覚悟が必要かについて語ってくれています。
皆さんは私ほどの大失敗はしないかもしれませんが、人生でいくつか失敗することは避けられません。慎重に生きすぎて生きていないのと同じ場合を除き、失敗せずに生きていくことは不可能です。でも慎重に生きることは、それ自体が失敗ですが。
失敗は、試験をパスすることでは決して得られなかった、内なる安心感を与えてくれました。 失敗は、他のことでは学ぶことが出来なかっただろう自分自身のことについて教えてくれました。 自分には強い意志と、自分が思っていた以上の自制心があることに気づきました。 また、ルビーよりもずっと価値のある友人達がいることにも気づきました。
”挫折から這い上がって、賢く強くなれた”と知ることは、”これからずっと生き残る能力が自分にはある”という安心感に繋がります。自分自身や人との絆の強さなど、逆境に試されるまでは決して分からないでしょう。
そのような知識は苦しみから得た賜物で、今まで得たどの資格よりも価値がありました。
まとめ
大学の卒業式で大学中退者の講演があるのは皮肉なものですが、著名人が社会にでる若者に対するスピーチは若い世代にとって道標となってくれるはずです。
ぜひ参考にしてください。