皆さんは大学院と聞いて、どんなイメージを持っていますか?
「大学を出た後に、また大学院へ行って勉強するなんてよほど勉強が好きに違いない。」「裕福な家庭なのかな」といった漠然としたイメージをお持ちかもしれません。とりわけ、進学や就職に関してまだ本格的な関心のない大学1年生や2年生の場合はそう思うでしょう。
そこで、今回は、そもそも大学院とは何のために行くのか、また大学院に通うメリットやデメリットについてご紹介したいと思います。
この記事の目次
大学院は何をする場所なのか?その目的とは
理系で工学部などの場合は、かなり多くの割合で前期博士課程(修士課程)に進学します。中には後期博士課程まで行く方もおられますが、メーカーの研究職に就くなどの目的があれば、修士号を取得するだけで十分です。
一方、文系学部の場合は、法科大学院(ロースクール)へ行くことで、弁護士などの法律関係専門職に就職することを前提として、特別な訓練を受けます。
その他、例えば文学部、外国語学部などの方は文学研究科や言語学研究科などに進み、卒業論文の内容をベースとして深い研究を行います。
つまり、大学院は「勉強するところ」というよりは「研究するところ」であり、高度な専門的知識を有する者の育成機関というわけです。もちろん、授業はありますが、基本は修士論文を書き上げることが最終目的です。そのため大学院でのゼミは学部のゼミと比べて相当厳しいものになります。
大学院へ通うメリットとは?精神力の養成や将来の選択肢が広がる!
1.相当メンタルが鍛えられる!
学部生のゼミでは教授や同期から、疑問点や改善点を指摘されたり、院生から指導を受けるのが学部のゼミですが、大学院のゼミは、叱咤激励の「叱咤」の度合いも高く、研究室によっては罵詈雑言も飛び交います。特にこれは理系の研究室で多く、「こんな内容で修士号が取れると思っているのか!」また文系でも「君は語学もまともにできないなんて恥ずかしい」など言われる方も多いです。これは相当メンタルに刺さります。
もちろん、皆きちんと準備してきてはいるのですが、教授としては「修士号を取るにふさわしい人間になってほしい」という願いがあるので、どうしても厳しくなりがちです。
ですので、ゼミ前は学部時代の比にならないほど入念な準備をします。卒業してどこかの企業に勤める場合も、この経験が「丁寧で分かりやすい内容」の資料作り等に役立つことはもちろんです。
2.就職に有利・将来の選択肢が広がる
また、日本はまだまだ学歴社会です。理系の場合は大学院へ進学することで、就職に有利になりますし、ですから、一種の箔をつけるという意味で、大学院進学はかなりメリットがあるでしょう。
そして、修士論文を書き上げるためには語学力が相当必要になります。文系の場合、英語はもちろん、第二外国語の文献を読みこなす能力が要求されます。ですので、語学堪能な文学研究科や言語学研究科卒業者は、海外営業部への配属もありますし、海外勤務も夢ではありません。
プロ翻訳家・編集者・校正者といった語学や文章のプロとして生計を立てていくことも可能です。
大学院へ通うデメリットとは?学費が高い・女性は私生活で苦労する
1.何より学費が高い!
大学院へ通うとなると、相当な学費がかかります。理系と文系の差、また国立か私立によっても違います。
私立だと理系の場合、前期博士課程だけでも2年間でおよそ理系なら240万円、文系なら160万円前後と、入学金がおよそ28万円必要です。これは進学したくてもできない方にとっては、かなりの痛手と言えます。
ですが、大学院生の場合は、仮に実家から学費が賄なくてもJASSOから学費貸与を受けて、後に論文や学会での実績を申告することで、第一種奨学金全額返還免除特例というものが利用できます。ですので、学費が実質全額タダになるどころか、生活費などもそのお金で賄えます。
実際、筆者もこれを利用して実質タダで大学院を出ましたので、本当に研究に真摯であれば、特例を受けることは難しくありません。もちろん、この特例を取るためには、単位の平均値がトップクラスであること、学会発表や修士論文の内容が優秀でないといけませんので、相当疲弊します。
2.女性は私生活で苦労することも?
現代の平均初婚率は男女ともに28歳前後ですが、学部卒の女性達は平均して院卒女性より早く結婚し、出産をします。もし結婚願望があり、早めに結婚したいのであれば、院卒がネックになることもありえます。
また、男性は院卒女性(特に理系や旧帝国大)に対して「プライドが高そう」「自分より学歴が上の女性は嫌」「理論武装してきそう」という偏見を持つ方もおられます。
これが原因で、合コンで引かれる(どうしても学校歴を言わざるをえない状況にて)、彼氏に振られる、お見合いで断られるという冷遇を受けることもあるのです。
もちろん世の男性が全員そうだとは限りませんが、未だに日本では「男が女を守り、男は女よりも優れていなければならない」という考えが残っているので、残念なことに理系院卒女性が結ばれる相手はかなり限られるでしょう。
会社においても、自分は全く鼻にかけていないにしても、周囲の男性が無駄に張り合ってくる、「院卒なのにこんなこともできないの?」と最初から決めつけるというひがみのようなケチをつけられることもありますし、気を使ってへとへとになるでしょう。
大学院進学を検討する皆さんへ
卒業後すぐに良い結果が残せなくても、逆差別を受けたとしても、大学院を出たことを後悔しないで下さい。社会に出れば、院卒だからと言って最初から何でもできるはずがないのです。
卒業後すぐは、結果が目に見えなくても、長い視野で見れば、大学院で培ったメンタルの強さや、教養、語学、専門知識は必ず人生にプラスになります。きっと30歳あたりで、大学院を出ていてよかったと思える日が来るでしょう。
ですので、大学院進学を検討している学生の皆さんは、これらのメリット・デメリットをよく理解した上で、検討して見て下さい。