理系学生にとって今や進路の選択肢の一つとなっている大学院。
高校生の頃から大学院進学を見据えてきた学生もいれば、大学を卒業間近になって進学するか迷っている学生もいるのではないでしょうか。
また、「進学したいけど金銭的に厳しそう」「周りが就職する中で一人だけ院試験の勉強するのは辛い」と、進学を諦めようと悩んでいる学生もいるかと思います。
そこで今回は皆さんの大学院へ進学するメリットを詳しくお伝えします。
大学院進学にはどんな利点があるの?
大学院へ進学する際、自分の大学の大学院へ進学する選択肢と他大学の大学院へ進学する選択肢の2つが考えられます。ここではまず、在籍中の大学の大学院へ進学することを想定して大学院進学のメリットを紹介しています。
一般的な大学院進学のメリット
メリット1:将来の選択の幅が広がる
大学院へ進学する一番のメリットは、就職の選択の幅が広がることです。
私は学部2年生のとき社会勉強と称して合同説明会に潜り込んでブースを回ったのですが、全てのブースにおいて「2年生のときから見に来て偉いですね、大学院に入ったらまた来てください。」と言われました。
つまり、「理系就職したかったら院生しかいらないよ。」と言われたのです。
その後、実際自分が大学院に進学し就職状況が見えてくると、本当にそうであることを再認識しました。
理系就職は「院卒が常識」なのが現実
昨今、企業(インフラや公務員は除く)は技術職には主に大学院生を採用しており、学部生はどんな有名大学を卒業しても文系配属になることが多いです。
つまり大学院へ進学していないと理系として就職できないのです。
大学院まで行ってしまったら逆に文系就職したくてもできないのでは? と思われるかもしれませんが、実際にはそんなことはありません。
理系の大学院を修了しても商社やコンサルタント、金融そしてマーケティング関係に就職する人もたくさんいます。大学院に進学すると職業の文理選択が後々可能となりますが、学部卒で就職してしまうと職種の選択肢が少なくなってしまうのです。
メリット2:就活が楽になる
大学院に進学すると、技術職への就職が楽になります。
理系の専攻では毎年企業への推薦枠が数多くあり、この制度を利用して就職することができるのです。
推薦を利用して就活した場合、選考過程が少ない上に内定の出る可能性がかなり高くなります。推薦制度は大学院生が優先的に利用できます。
また推薦以外にも研究室の教授が企業の方と親しい場合、直接紹介してもらえるケースもあります。いわゆるコネですね。この場合も一般の選考に比べるとはるかに楽に就職することができます。
メリット3:物事を深く追求するようになり物の見方が変わる
大学に入学するまでの受験勉強では暗記が中心になるため、どうしても私たちの思考は表面的なものになりがちです。
しかし、大学院に進学して合計3年間あるいは6年間一つの物事を深めると、普段の思考も自然と深くなり世界の見え方が変わります。それは今後の人生における糧にもなりますし、同時に会話にも深みが増すので、社会的に活躍している人たちとお付き合いするときにとても強みになります。
他大学(有名大学)大学院へ進学するメリット
メリット1:有名大学の就活システムが利用できる
有名大学の大学院へ進学すると有名大学の就活システムが利用できます。
就活と言えばスーツを着て合同説明会に行ってエントリーシートを書いてかなりの長期戦になるというのが一般的です。しかし実際有名大学の理系では一般的な就活は行われていません。
では、どのような就活が行われているか?
有名大学では学内の合同説明会で十分
有名大学では、学内で合同説明会が行われています。代々先輩からわざわざ学外で行われている合同説明会に行く必要はないと言われているので、ほとんどの学生が説明会への参加は学内で済ませてしまいます。学内なので授業の合間に私服で参加しています。
OBがリクルーターとして就職をサポートしてくれる
次に、リクルーターが学校にやって来ます。有名大学ではたくさんのOBが大企業に就職しています。このOBたちが毎年母校にリクルーターとしてやって来て学生のサポートをしてくれるのです。
インターネットでリクルーターについて検索するとリクルーター面接云々などの検索結果が出てきて不安を煽られますが、有名大学のリクルーターは決してそんな存在ではありません。
OBがリクルーターをしている場合、学生は自分の後輩です。少しでも自分の後輩に有利になるように働いてくれます。
実際、私もリクルーターが来る飲み会によく参加させてもらっていたのですが、その際に名刺を渡されて「今日集まってもらった皆さんは、選考の最初はスキップして工場見学から選考に参加していただけます。興味があったらこの連絡先に連絡ください。」と言ってもらえたりしました。
工場見学から選考に参加できると工場見学の後面接を1~2度受けて終わりです。他にも、エントリーシートを添削してくれたり、募集人数の枠を増やしてくれるリクルーターもいます。
企業への推薦が得られる
この他に有名大学では上記の一般的な進学のメリットで触れた推薦もかなりあります。このように就職における有名大学の大学院へ進学するメリットは非常に大きなものです。
世間では他大学の大学院へ進学すると学歴ロンダリングなどと言われますが、就活で重要なのは最終学歴です。企業側はどの大学の学部を卒業しているかは問題にしません。大学院しか所属してなくてもきちんとその大学院の学生として扱ってもらえます。
また余談になりますが、日本では未だ学閥のある企業が存在します。そしてそのような企業では、その大学出身者のみ参加できる会などが催されているそうです。最終学歴が有名大学であることが入社後も影響することがあるのです。
メリット2:潤沢な研究費で様々な経験ができる
大学での研究に使われるお金の出所は主に科研費と呼ばれる研究費です。そしてこの科研費の配分額が大学によって全く異なります。以下のリンク先のPDFファイルの26ページ以降に詳細が載っています。
当然のように東京大学が一位ですね。その後も有名大学が続いています。所属した大学院により研究に使える研究費が全く異なります。
つまり、研究できる設備やスケール、海外の国際学会への参加、研究室から海外へ短期留学など、研究活動に大きな差ができるのです。
有名大学の大学院に進学すると在学中に色々なチャンスに恵まれます。
メリット3:自分の世界が広がる
他大学の大学院への進学すると、2つの大学を経験できることになります。そしてその分自分の世界を広げることができます。
皆さんは物理学者ファインマンの自伝「ご冗談でしょう、ファインマンさん」をご存知でしょうか?この本の中にこんなエピソードがあります。
ファインマンは当時MITの学生でした。彼は、MITは理系でアメリカ一の大学だからそのままMITの大学院へ進学したいと言います。すると教授は、彼にだからこそ他の大学院へ行って外の世界を見てくるようにと言います。そこで彼はプリンストンの大学院へ進学するのです。
実際私も他大学の大学院へ進学しました。そのことは正直非常によかったと思っています。
例えば就職を例にとってみても、私が学部時代を過ごした大学では女子は派遣で働くか正社員になるかということが話題に上っていました。しかし進学した先では、就職偏差値上位企業を狙うのが当たり前の世界でした。
その2つは全く違う世界でしたが、お陰様で多角的に物を見ることができるようになりました。さらに、自分の世界が広がるとより自分を知ることができます。将来的に例えば自分の適職等に出会えることにつながるのです。
しかし他大学の大学院進学のデメリットももちろん存在します。それは、研究室が変わるので研究テーマが変わってしまうことです。
理系の就活では技術系希望の場合研究テーマに関する要旨の提出やプレゼンがメインになります。
M1の4月から研究を始めて慣れた頃に夏のインターンシップの募集が始まりますが、その頃はまだ結果はありません。そして研究が順調に進まなければ、就活本番の頃でも結果らしい結果がなく、なんとかストーリーを考えて研究の要旨を提出することになります。
もちろん先生や先輩が助けてくれるので全く問題ないのですが、他の学生より成果が少ないためエントリーに前向きになれない学生もいるようです。
番外編:こんな方法があるなんて!既卒が新卒になる方法!?
日本の就活は新卒一括採用です。昨今新卒で就職できなければもうチャンスがないと不安になる学生が多いように見受けられます。
しかし実は、大学院を修了すると、途中ブランクがあっても新卒扱いになります。
実際大学院に在籍してみると、就職してみたけれど、会社の業績が悪くなり退職して大学院を受験したり、もう一度学生生活を送りたいと思って入学する学生が何人もいます。
そして彼らは院卒することによって、以前働いていた会社よりも更に大きな会社に就職できます。
もちろん、学部を卒業した時点で就職が決まらなかった場合も同様です。このように大学院に進学することによってブランクがあっても再び新卒にすることができるのです。
最後に
今回の記事では他大学の大学院への進学を含め、大学院進学のメリットをまとめました。大学受験に比べるとあまり知られていない大学院進学について知ることで、少しでも将来の選択に役立てて頂けると幸いです。
またこれから院試シーズンが到来します。今年受験される皆さんの健闘をお祈りしています。