ゼミでは、1年間あるいは2年間、同じ分野の研究をしながら、研究室のゼミ生・教授と狭く深い付き合うことになります。
大学の授業で最も時間をかけるのがゼミ活動であり、長い時間をかけて苦手な人と興味のないテーマを深く研究していくのは嫌ですよね。
ゼミ選びで失敗してしまうと、研究そのものが嫌になります。論文を書くのに苦労し、卒論が終わらず卒業できない事態にもなり兼ねません。
そうならないためにも、文系学生のセミ選びのポイントを3つお伝えします。
ポイント1:研究テーマ
ゼミ選びで最も大切なのは、研究テーマを予め決めておくことです。
ゼミでは「あるテーマ」に沿って「なぜなのか?」を深く追求して考察し、自らの考えをまとめて発表する機会が必ずあります。その際に興味のないテーマのゼミに入ってしまうと、やる気が起きなくなってしまいがちです。(周囲の人との温度差も感じる)
4年次では卒論を書くことになりますが、まったく興味のないテーマについて2万字の論文を書くことはほとんど拷問に近いです。逆に、自分なりに興味を持ったテーマであれば4万字であろうとスラスラ文章を書けてしまうもの。
ゼミ選びの段階で研究テーマは詳細に決まっていなくても大丈夫です。自分なりに問題関心を持っていること、好きな分野のこと、興味があって調べてみたいことなど、自分が何らかの理由で主体的になれることだといいでしょう。
自分の研究テーマによって概ね2つか3つぐらいのゼミに選択肢を絞ることができます。
文系の大学生なら定番のテーマかもしれませんが、たとえば「大西洋の砂糖の貿易について研究したい」と考えた場合、歴史学ゼミ、経済学ゼミのどちらに入ってもそのテーマを研究することができます。
こうして、歴史学ゼミと経済学ゼミのどちらに入ろうか悩んだ場合、続けてゼミのメンバーや教授でさらに絞り込むことになっていきます。
ポイント2:メンバー
ゼミ選びでは、その研究室にどのような人たちが集まっているのかを見るのも大切です。「研究熱心な学生が集まっているゼミ」と「学業の一貫として何となく活動しているゼミ」では、活動の質が全然違います。
また、あなたのやる気という面でも、一緒に活動したいと思える人が集まっているかどうかは非常に重要な指標になります。
- メンバーが優秀であるか
- どうしても苦手なメンバーがいないか
これらの要素も必ず見るようにしましょう。
あなたがゼミで報告をすると、教授から「ここはどういうこと?」「ここはおかしいんじゃないの?」と指摘を受けることが増えます。それだけではなく、報告を聞いていたゼミのメンバーから指摘されることも多々あります。
ゼミのメンバーが優秀であればあるほど、冴えた指摘をしてくれます。それが自分の研究をより良いものにしてくれることもしばしばあるものです。
周りのメンバーが優秀であれば、自分もがんばろうと奮起しやすくなります。こうした点から周りに優秀な人を置くということは大切です。
ゼミというのは少人数で活動する狭いコミュニティーです。苦手な人とも否応なくかかわらなければなりません。
場合によっては飲み会やイベントなどが催されることもあります。そんなとき、どうしても人間的に合わない人と一緒に活動するというのは、どうしても耐えられないものです。
ゼミのメンバーは「仲良しのおともだち」である必要はありません。苦手なタイプの人が集まっているゼミは避けるようにするのが懸命です。
ポイント3:ゼミの教授
教授を選ぶのも重要なポイントの1つです。卒論に対してそれほどモチベーションが持てない人、「楽ゼミ」を希望する人にとって、楽をさせてくれそうな教授選びが重要であるのは言うまでもありません。
そして、しっかりと卒論を書きたい人にとってもやはり教授選びは重要です。というのも、まったく同じテーマをやるにしても、誰の研究室で論文を書くかによって仕上がりがまるで違うものになるからです。教授を選ぶ際には以下の2点を特に気にするといいでしょう。
- 研究者として優秀か
- どんな指導のスタンスか
まず、研究者として優秀かを見ておいて損はないでしょう。
どの教授のもとで論文を書くかを選ぶことは、スポーツでいえば、どのコーチの元でそのスポーツを教えてもらうかを選ぶことに該当します。卒論に対して高いモチベーションを持っているなら、まず教授自身の研究者としての能力の高さを見るといいでしょう。
「東欧史研究」「社会経済学」など、論文をまとめた雑誌にコンスタントに査読論文を発表していたり、科研費を勝ちとっていたりする教授は、少なくとも研究者として一定レベルの人たちと言えます。
そういう研究者として優秀な人を選ぶと、自分の論文もレベルが高いものになるように指導を受けることが期待できます。
特に大学院に進学して研究者を目指すのであれば教授選びは特に重要です。査読論文が通過しなければ研究者としてやっていけません。学部生の間に、優秀な研究者のもとで査読論文の基礎を学んでおきましょう。
ただし大学の教授は、大学で講義をすることも、卒業論文の指導も、本職ではないということに注意しましょう。研究者の本職はあくまでも専門分野の研究です。
研究者として優秀でも、あなたの卒論執筆に対して面倒見のいい教授とはかぎりません。そこで、教授の指導のスタンスを把握しておくことも必要です。
たとえば、しっかりとした卒論指導を求めるなら、面倒見のいい教授の研究室にいくべきです。一方で、放任を好む学生が面倒見のいい教授のもとで論文執筆の指導を受けると「あれを読みなさいこれを読みなさい」と管理されてうまくいかないこともありえます。教授の指導のスタンスを見分けるためには、先輩の評判を聞くのが最も手軽です。
- この教授はおもしろい
- 課題が山のように出る
- 単位とるのが楽だ
- 指導が丁寧だ
- ゼミはどんな雰囲気か
ゼミによって活動の仕方は様々です。一つのゼミしか選べないのですから、先人の口コミを参考にして慎重に選ぶようにしましょう。
気になっているゼミの教授がやっている講義を参考にするのもおすすめです。普段の講義の進め方や成績評価の方法を見ていると、わかることはたくさんあります。
- この先生は厳しいかどうか
- 講義はおもしろいかどうか
- 課題をたくさん出すタイプか放任するタイプか
普段の講義でのその教授の姿は、ゼミになっても概ね同じです。自分で実際に教授の講義を受講して確かめてみましょう。
他人の評価と自分の見立て。この2つを組み合わせると、それほど「外れ」引くことはありません。
ゼミ選びでやってはいけないこと
1つだけ挙げておきます。それは、興味のない研究テーマを設定し、ゼミを選ぶことです。
このたった1つのことさえ守られていれば卒論はなんとか書き上げられます。
- 仲良しこよしの友人がいるから、なんとなく
- 就職に有利そうだから
興味のないゼミを選ぶと、論文が書けなくて地獄を見ることになります。ぼくの同級生にもそんな人がいました。筆がいっこうに進まないんです。
「論文」であるからには、期末レポートのように「調べたことをまとめました!」で終わりではありません。以下の3つのステップがどうしても必要になってきます。
- 1.先行研究を把握する
- 2.先行研究の問題点を指摘する
- 3.それに対する解決策を提示する
そのためには、少なくとも日本語で読める文献を全て読みきっておくことが必要です。
「まだ誰も指摘していないことを指摘する」「まだ誰も調査していないデータをとってみる」など、自分のオリジナルの部分がどうしても必要です。そうでなければ「論文」の名を冠するに値しません。
まったく興味のない分野の論文を読みあさり、自分なりに問題関心を持って、さらに自分のオリジナルの論文を書く。そんなのは苦行でしかありません。もちろん、友達に代筆してもらうことはできません。
だから「なんの興味も関心もない」分野のゼミを選ぶと本当にキツイです。
「就職に有利そうだから」といってゼミを選ぶ人がいるようですが、そもそも卒業できなければ意味がありません。よっぽど一部の旧帝大の有力なゼミならまだしも、文系の学部卒の大学生なんて、ゼミによって就職に有利不利なんて差はありません。
一般的に言えば、採用する新入社員が大学の時に経済学を専攻していようが、哲学を専攻していようが、採用担当者からすればまったく興味のないことです。興味があるのはちゃんと自分の会社でちゃんと働いてくれるかどうかだけ。
だから、就職のことを考えてゼミを選ぶなんてバカげています。
さいごに
個性的な人との濃い時間を過ごせるかどうか、納得のいく卒論が書けるかどうか、自分にあったゼミを選べるかどうかは、事前のリサーチによる部分が大きいです。
研究テーマ、メンバー、そして教授。この3つのポイントでフィルターをかければ、自分の納得のいくゼミ選びができます。